資産運用

日証協が証券口座不正乗っ取りで加害者口座の特定を検討か?

mesigaumai

私のような個人投資家にとって朗報になるかもしれない話が湧いて出てきました。巷で問題になっている証券口座不正乗っ取り被害に進展があるかもしれない内容で、「加害者口座の特定を検討」するかもというものです。Bloombergに投稿されていた記事が元となっていますが、非公開情報とのことなので確定情報ではありませんので、その点はご注意ください。

今回はこの記事を元に、海外での類似事例や量刑の比較なども併せてまとめてみたいと思います。

1.日証協の新対策:「加害者口座の特定」へ

まずは元ネタを簡単にまとめてみました。

2025年8月15日、Bloombergは「日本証券業協会(日証協)がネット証券口座の不正乗っ取り対策として、加害者口座の特定を検討している」と報じました。

  • 背景
    他人の証券口座を乗っ取り、特定銘柄を高値で購入させた後、自身の口座で売却して利益を得る「相場操縦型」の不正が多発。
  • 協議の動き
    日証協内の「インターネット証券評議会」で、加害者口座の特定や凍結などの対応を検討。警察や東京証券取引所も交えた協議も視野。
  • 被害状況(金融庁発表)
    • 2025年1~7月末累計:被害件数 8,111件、被害額 6,205億円
    • 7月単月の不正取引額:460億円
  • 従来との違い
    これまでは「被害者補償」に重点が置かれてきましたが、今回は「不正加害者側の追跡・制裁」に舵を切る動きです。

※引用元:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-15/T10D5PGP9VCX00

被害状況については、別の記事でもまとめたものがありますので、以下にリンクを貼っておきます。参考にしていただければ幸いです。


2.海外の類似事例との比較

お次に、海外で起きた類似事例を見ていきます。

アメリカ

  • ハッキング+株価操作事件(2017–18年)
    投資家口座を乗っ取り、マイクロキャップ株を売買させて価格を吊り上げた後に売却。数百万ドル規模の不正利益。
  • インサイダー取引型のハッキング事件(2024年、英国人被告)
    米企業幹部のメールをハッキングし、未公開の決算情報で取引。約375万ドルの利益を得たとされ、有罪なら懲役20年の可能性。

香港

  • 証券口座ハッキング事件(2016年)
    81件の証券口座が被害に遭い、約2,000万ドル規模の不正。薄商い株を吊り上げる「Pump-and-Dump」の典型例。

 Pump-and-Dumpとは
  短時間で価値のない資産の価格をつり上げた後で売りたたくこと。

フィリピン

  • BDO銀行ハッキング事件(2021年)
    700口座以上から不正送金が発生し、仮想通貨購入にも悪用。中央銀行が介入し、補償とシステム改善が行われた。

共通点:口座乗っ取りを起点とする相場操縦や不正送金。
相違点:米国はインサイダー要素が強く、香港や日本は株価操作型が中心。


3.海外ではどの程度の罪に問われるのか

それでは、類似事例に対して海外ではどのくらいの罪に問われるかを見ていきましょう。

  • アメリカ
    • 証券詐欺(Securities Fraud):懲役20年、罰金500万ドル以下
    • コンピュータ詐欺(CFAA):懲役10年(再犯は20年)
    • 電信詐欺(Wire Fraud):懲役20年
      → 実際の判例でも懲役9年〜20年級が科される。
  • イギリス
    • インサイダー取引:最長懲役7年+罰金無制限
    • 不正アクセス:懲役2~10年
  • 香港
    • 相場操縦:懲役10年+罰金1,000万HKドル
    • 不正アクセス:懲役5年
  • フィリピン
    • サイバー犯罪防止法違反:懲役6~12年
    • 不正資金はマネーロンダリング法により没収・凍結。

まとめると
米国は最も厳格で、懲役20年クラスが標準的。香港・英国も実刑+高額罰金が一般的。一方、日本は比較的軽い量刑にとどまる傾向があります。


4.日本とアメリカの量刑比較(判例ベース)

最後に、実際の判例を元に日米での量刑比較をしてみます。

アメリカの判例

  • Klyushin事件(米国、2023年判決)
    決算情報をハッキング→約9,000万ドルの不正利益。懲役9年
  • SEC公式Xアカウント乗っ取り事件(2024年)
    ビットコインETF虚偽情報を投稿→相場混乱。懲役14ヶ月+没収+3年監視付き釈放
  • Coinbase仮想通貨インサイダー事件(2023年)
    上場前情報を利用した取引。懲役10ヶ月+没収89万ドル

日本の判例

  • ライブドア事件(2006年~2008年)
    虚偽記載・粉飾決算。懲役2年6ヶ月(堀江貴文元社長)。
  • 元野村証券社員の詐欺事件(2024年、岡山地裁)
    顧客から約2億円を詐取。懲役10年+罰金300万円(求刑13年)。

比較まとめ

  • 米国:不正アクセス+証券詐欺で懲役10年以上も珍しくない。
  • 日本:同様の経済犯罪でも懲役は2~10年程度。
  • 違い米国は「市場の公正性」を強く重視し、高額罰金や長期懲役で強い抑止力を狙う。日本は比較的軽い量刑が目立つ。

まとめると・・・

  • 日本では、証券口座乗っ取りが急増し、2025年7月までに累計6,205億円の被害。日証協は「加害者口座の特定・凍結」という新たな対策に動き出した。
  • 海外では、米国や香港で同様の「口座ハッキング→株価操作」事件が過去に多数発生しており、既に厳しい刑事罰が適用されている。
  • 米国では懲役10~20年級、日本は2~10年級と、量刑の重さには大きな差がある。
  • 日本でも被害額の大きさに見合った厳罰化が議論される可能性が高い。

おわりに

これまで証券口座不正乗っ取りについてはいくつか記事をあげてきましたが、やっとこさ加害者側への制裁が強化される動きがでてきたなぁと思いました。政府は貯蓄から投資へをスローガンにNISAの拡充を進めてきましたが、安心して投資ができなければその目論見も夢物語で終わってしまうかもしれません。罪人にはそれ相応の罰を与えなければ抑止力にはなりませんので、この流れで加害者に対する罰則強化が進んでほしいなぁと思う今日この頃です。

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お金持ちの無職になりたい夫婦
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アラフォー共働き夫婦とネコ2匹で暮らしています。FIRE目指して2023年から本格的に資産運用を始めました。まだまだ道は遠いけど、資産が増えると嬉しいなぁ。
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